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アメリカ人に響く英語表現 - 動詞に気をつけろ

言語の違いに興味がある。土地が人に影響を与え、人が言語を作り、言語が人に影響を与え、文化が創られる。

アメリカに住んで一年がたち、それなりに英語も身に付いてきた。ある言語を習得するさいに一番苦労する点にこそ、その言語の本質があると思う。言語の習得には段階がある。ある点に苦労し、それを突破すると次のレベルでまた苦労する。

たとえば日本語では、そもそもしゃべるのに苦労した記憶はないが、小学生のころからずっと「漢字の読み」に苦労している。いまでも読めない単語に出会う。次に、「文章をどういう語尾で終わるか」相手によって、またそのときの雰囲気によってあわせるのに苦労している。敬語や丁寧語を使いつつも、ときどき「〜ですよね」や「ではでは」などといった軽い表現も組み合わせて使うことは日常的によくある。そういうときに困る。
この二点は、いまでも苦労しているが、英語では困ったことがない。


ドイツ語だとどうか。最初のころはあまり覚えていない。ある程度上達してから苦労したのは、①過去分詞(口語で過去のことをいうときはほぼ、過去分詞を使う)が、seinをとるか、habenをとるか、②目的語を第3格でとるか第4格か、③名詞は男性か女性か中性かの三点である。しゃべりながら、その選択が近づくと、脳の別のメモリ空間(辞書アプリケーションといってもいい)を使って別に演算処理し、結果をメインスレッド(言葉の流れ)のなかに結果を入れてあげないといけない。

名詞の性はなんども使っているうちに意識しなくてよくなるが、それは頭の中に名詞の性の辞書が常駐するようになり、強化されただけであり、やはり脳のCPU(演算処理装置)はつかっているものと思われる。そういう意味でドイツ語は名詞を強く意識する言語だと言える。


英語はどうか。ちかごろ一番意識していることは、「動詞の選択」である。何を表現するにせよ、「動詞」を絶対的に文書の最初のほうにもってこないといけない。これがきつい。ドイツ語は、動詞は文の最後でよかったといまさらながら気がついた。日本語もまたしかり。
ドイツ語がおもしろいのは、動詞を前にもってはくるのだが、とりあえず、主語に「sein(be動詞)」か「haven(have動詞)」をつけておいて、肝心の動詞は文末にくっつければいいことである。これはあたかも日本語で、主語にとりあえず
「(主語)は〜〜」と「は」をくっつけておいて、最後に動詞をもってくればいいのに似ている。実際に、日本人の英語を聞いているとなんでもかんでも「〜 is 〜」 と主語のうしろにbe動詞をつけてしまっている人が多い。しかし、英語ではこれは許されない。主語のすぐ後ろにくる動詞が、その文のすべてのニュアンスを決するといいきってしまってもいい。

英語のキャッチコピーを見ていると、いい文は動詞が最初にくる。これは見た人にActionを促すからだそうである。「Just do it」「Broadcast yourself」などがそれである。

Be動詞を意識的に使わないようにし(特にbe動詞+形容詞を使わない)、「get, have, give, come, make」などの基本的な動詞の使い方をマスターし、さらに他の動詞の語感を学んでをうまくつかいこなすことが英語上達の早道であると思う。

次に気をつけるべき点として、否定をなるべく文の最初にもってこないといけない。これも精神的にこたえる。僕の脳の言語構造はそういう風にできていない。

たとえば、「喫煙は健康によくないと思う」というときに正しくは
「I don't think that smoking is good for health」となる。
つい、
「I think that smoking is not good for health」
と言いたくなり、頭が混乱する。結果、よく間違って
「I don't think that smoking is not good for health」
と言ってしまう。

ドイツ語なら
「Ich glaube nicht」
だったわけで、わずかな差と思うかもかもしれないが、いまだに慣れない。
否定を先にもってくることをうまく活用すれば、「Don't 〜」の構文は英語として強いメッセージを発するいい文章になる。